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私たちの起源

キッチンテーブルを囲む、ささやかな出来事から物語は始まりました。靴メーカーに勤めていたロジャー・ソールの父が持ち帰った革の端切れを、若きロジャーはベルトやチョーカーへと仕立て、ポートベロー・マーケットで販売しました。 母ジョーンから借りた500ポンドは、文房具とフランス製バックルの仕入れに充てられ、こうしてマルベリーは誕生しました。ロンドンでロジャーがデザインとマーケティングを担当する一方、ジョーンはサマセットの自宅ガレージで生産を統括。卓越した技術と支え合いの精神、そして創意工夫を礎に、あらゆる意味での家族経営ブランドが築かれていきました。象徴的なマルベリーツリーのロゴは、ロジャーの妹ローズマリーがデザインしたもの。妻モンティ・ソールはランウェイと工場の双方に立ち、都会的なファッションの世界と英国の田園風景、そのどちらにも自然に溶け込むブランドの精神を体現しました。

ロジャーはサマセットとロンドンを行き来し、都会とカントリーという対照的な世界を往復していました。1975年には、英国の伝統に着想を得た「ハンティング、シューティング、フィッシング」を発表。ラグジュアリーでありながら実用的、タフでありながら洗練されたコレクションは、世界的に評価され、1979年には女王輸出賞を受賞しました。

1990年には自社誌『マルベリー・ライフ』を創刊し、ファッション、カルチャー、職人技を紹介。ライフスタイルブランドとしての地位を確立しました。1981年には初のバッグコレクションを発表し、その翌年には、オックスフォード通り近くのジーズ・コートに初のブティックをオープン。パリにも旗艦店を構え、1993年にはパリで初のランウェイショーを開催しました。ブランドの世界観は国境を越えて広がり、今日では世界中に100店舗以上を展開しています。

2002年、ニコラス・ナイトリーのもとで新たなクリエイティブ体制が始動し、「ベイズウォーター」は英国ファッションを象徴する存在へと成長。ケイト・モスからジェニファー・ロペスに至るまで、多くのセレブリティに愛されました。2008年にエマ・ヒルがクリエイティブディレクターに就任すると、「アレクサ」が誕生。アレクサ・チャンのヴィンテージ・ブリーフケースに着想を得た、伝統と現代性を融合するデザインでした。 2015年には、ジョニー・コカが就任。フィービー・ファイロのもとでの経験を背景に、英国の職人技に新たな視点をもたらしました。アーカイブから1970年代のマルベリーロゴを復刻させるとともに、「アイリス」と「アンバーリー」という2つの新しいバッグファミリーを発表しました。

マルベリーの核には常にコラボレーションがあります。2021年の創業50周年には「マルベリー・エディション」を始動し、プリヤ・アルワリア、ニコラス・デイリー、リチャード・マローン、ステファン・クックらコンテンポラリーデザインの第一人者たちを招き、マルベリーの象徴的なバッグを再解釈しました。 2023年にはポール・スミス、2024年にはレジーナ・ピョウが、マルベリーの伝統を再解釈したコレクションを発表しました。古きと新しき。伝統と大胆さ。親しみやすさと意外性。そうした創造的な緊張感こそが、常にマルベリーの中心にあります。